Perspectives

「ビジネスのちから」で環境・社会課題を解決する
“新しい視点”を。

日本生命保険相互会社 

全国5万人の営業職員が「がん啓発活動」を推進し、自治体が取り組む“健康寿命延伸”に寄与

キーワード:がん啓発/健康寿命延伸/地域の健康増進

近年、働く世代を中心に生活習慣病が増加しているほか、経済状況や情報の格差によって健康格差が拡大するなど、健康に関するさまざまな問題が社会課題となっています。加えて、寿命の長さだけではなく、心身ともに自立し健康的に生活できる期間の「健康寿命」にも関心が寄せられています。 こうした中、日本生命は47都道県、約290市区町村の自治体と締結した協定に基づき、「健康増進・疫病予防」に取り組み、国内の健康寿命延伸への寄与を目指しています。特に力を入れているのが、がん検診の受診を促す「がん啓発活動」です。その活動全体を統括している若松さんと、営業職員のがん教育を担当する岡さんにお話をうかがいました。

Person

日本生命保険相互会社 業務統括部 地域振興支援室 課長

若松 佑樹

2003年に入社。支社・人事部・保険販売のミドルオフィスで経験を積んだ後、営業部長を5年間務め、地域や契約者との関係を重視した営業活動に従事する。その後、業務提携先のあいおいニッセイ同和損保への出向を経て、地域振興支援室に配属。現在、全国約100支社のがん啓発活動をはじめとする地域振興の企画立案・現地執行を担う。

Person

日本生命保険相互会社 業務統括部 地域振興支援室 副主任

岡 愛美

2021年に入社。既契約者向けのアフターフォローや保障見直し等の営業活動を1年半担当し、契約者との対話を重視してきた。現在は地域振興支援室にて、各支社の担当者とコミュニケーションをとりながら、地域の課題に適した取り組みをともに考え、その運営をサポートしている。「がん啓発活動」では、営業職員へのがん教育やがんに関する情報提供ツールの企画を担当。

国内の健康寿命延伸のため、がん検診の受診を促す

――「がん啓発活動」を始めたきっかけを教えてください。

若松:現在、日本生命は47都道府県の約290の自治体と協定を結んで、それぞれの地域や社会の課題に応じた活動に取り組んでいます。そのうちの「健康増進・疫病予防」の一環として「がん啓発活動」を始めました。

 日本人の年間死亡者のうち、4人に1人ががんで死亡しており()、がんは、高齢者だけでなく、働き盛りの世代でも発症します。しかし、国内のがん検診の受診率は他国に比べて低い傾向にあります。厚生労働省によると、その原因は「がんに関するリテラシーの低さ」にあるようです。この活動の監修者である東京大学の中川教授が常々おっしゃっていることは、「がんは、知ることがいちばん大事。知っているか知らないかで生死が大きく分かれてしまう」ということです。私たちもより多くの人へ伝えていかなければならないと思っています。

 そこで当社では、地域の皆さまにがん検診に関するアンケートを実施し、その各回答内容に合わせてがんに関する正しい情報を提供して受診を促しています。例えば、アンケートの第一問に「がん検診を受診していますか」という項目を設け、それに対して「受診していない」と回答した方には、「がんは誰でもなりうる病気である」ことを伝える動画を発信しています。また、活動内容やアンケートの結果は、都道府県や市区町村の自治体に報告しています。

『厚生労働省「令和5年(2023)人口動態統計月報年計(概数)の概況」』『(公財)がん研究振興財団「がんの統計2025」部位別 がん死亡数(2023)』より


岡:
その報告書に当社が回収したアンケートの結果も掲載しているのですが、各自治体の方から「おかげで、今後のがん検診受診向上に向けた政策の立案ができた」など、ご好評をいただいています。

――そのほかに現在取り組まれている地域振興はありますか。

若松:連携協定のなかに「地域の安心・安全」という項目があるため、交通安全啓発活動や地域の健康サポート活動などにも取り組んでいます。

 交通安全啓発活動は、地域の皆様に交通安全の意識を持っていただくために、自転車保険の義務化とヘルメットの着用の努力義務化の認識状況を伺うアンケートを実施しています。また、地域の健康サポート活動も生活習慣病に関するアンケートを実施し、回答者の認識に合わせて適した情報を発信しています。

 その他、新しいお客様にお会いして情報提供を行うために、自治体や地域企業・団体とタッグを組んだイベントの推進や、先に述べたような地域振興の取り組みの対外発信強化などを行っています。

がん検診受診の重要性を伝え続け、顧客の行動が変化

――「がん啓発活動」における役割を教えてください。

岡:私は営業職員のがん教育とがんに関する情報発信の企画を担当しています。主には、職員向けの教材やお客様に配布するビラを作成しています。

若松:この活動の肝は、まずは営業職員が正しいがんの知識を身に着け、「早期発見の重要性」と「誰でもなる可能性がある」ことを理解することです。お客様と双方向のコミュニケーションを図るためにも、営業職員へのがん教育は不可欠であり、そうした意味でも、岡さんには重要なポジションを担当してもらっています。

岡:最近、お客様から「早期発見ができた」という声をいただいて嬉しかったです。また、2年連続回答いただいたお客様のなかには、2023年度には「がん検診受診なし」と回答した人の4人に1人が、2024年は「がん検診受診あり」に変化しました。私たちの活動が行動変容に貢献し、地域の健康増進につながっていることを実感しました。

2年連続回答者のがん検診受診状況

「受診予定あり」を含む

(日本生命保険相互会社提供資料をもとにブレーンセンターで作成)

――実効性のある取り組みになっているんですね。お二人が本プロジェクトを通じて気づいたことを教えてください。

若松:創業以来、お客様本位で事業に取り組んできましたが、それが地域社会への貢献につながっているのだと気づかされました。5万人の営業職員も、事業活動を通じて社会に貢献しているんだということを、改めて認識する機会になったのではないかと思います。

岡:営業現場に所属していたときは、お客様のことばかり考えていて、正直、社会貢献ということは考えていませんでした。しかし、地域振興支援室の一員として活動するようになって、全国の営業職員はお客様だけでなく、地域にも寄り添って活動してきたことに気付きました。

若松:私たちが向き合うべきなのは、地域やお客様一人ひとりであり、双方向によるコミュニケーションが必要です。営業職員が事業を通じて社会価値を提供していることをより実感してもらい、誇りを持って取り組む職員で溢れたリテール部門になるようサポートしていきたいと思います。

幅広い世代からアプローチをして、国内全体のがんのリテラシー向上を図る

――今後はどのようなことに取り組んでいくご予定ですか。

岡:実は、2024年度まで全国各地の支社の好事例を取材などで収集し、社内への発信や支社の地域振興の取り組みを支援していました。そのなかで、地域や支社ごとに抱える課題は異なり、取り組みやすさには格差があることに気づきました。

 そこで、ある支社の担当者から「自治体向けに何か取り組みをしたいができることは何か」と相談を受けた時にも、テーマを絞らず、さまざまな好事例を紹介し、「各自治体の課題や想いについて聞いてみてください」と伝えました。その結果、担当者から自治体との具体的な取り組みに繋げることができたと報告を受けました。

 そうした経験を踏まえて、全国の営業職員一人ひとりが地域の課題に寄り添いながら、“がんの先生”になれるように注力していくつもりです。また、営業職員の指導などを担う関係部署とも連携し、より知識を深められる教材の作成やツールなどを作っていきたいと思います。

若松:大人だけでなく、小中高生のがん教育の支援にも取り組むことを計画しています。すでに学校の学習指導要領には「がん教育」が含まれ、文部科学省が医師やがん経験者といった外部講師の活用を促していますが、外部講師によるがん授業実施率は地域間格差が大きい状況です。中川教授らは、これを解決するために「一般社団法人医学生によるがん教育推進協会」を設立し、医学生がボランティアで子どもたちに正しい知識を伝えています。当社も、この教会に資金と運用面で支援・協力することになりました。

 今後、がんの正しい知識を幅広い世代に伝えていく方法を考え、がんに対する考えや姿勢を改善していきたいと思っています。

取材後記

 取材を通じて、日本生命が保険やそれに付随するサービスの提供だけではなく、「健康寿命の延伸」という目標を掲げて様々な取り組みをされていることを知り、保険というのは契約者のみならず地域や社会全体に貢献する事業なのだと気づかされました。また、取材前まで「まだ自分には関係ない」とがんという病気を意識したことはありませんでしたが、若松さんと岡さんから「20代でもがんにかかる可能性がある」と教えていただき、決して他人事ではないと考えを改めるきっかけになりました。

 アンケート回答者の方に送付しているがん教育動画によると、早期に発見できれば9割が治るそうです。そのためには1~2年に一度の検診が必要とのことでした。これからも健康に生活を送ることができるよう、自分も受診してみたいと思います。

(ブレーンセンターSM)

日本生命保険相互会社

1889年に創立された日本最大手の生命保険会社。「共存共栄、相互扶助」の精神にもとづく生命保険業を通じて、「誰もが、ずっと、安心して暮らせる社会」の実現を目指し、「人・地域社会・地球環境」の3領域で社会課題解決への貢献に取り組む。全国約50,000人の営業職員による各地域での健康寿命延伸への貢献活動や、機関投資家としての立場から自社のポートフォリオにおける温室効果ガス排出量の計測と削減を推進している。

https://www.nissay.co.jp/

企業詳細へ

ページの先頭へ戻る
with Next Generation 未来へのインタビュー