Perspectives

「ビジネスのちから」で環境・社会課題を解決する
“新しい視点”を。

豊田通商株式会社 

脱炭素を儲かるビジネスへ──豊田通商が示す、 環境経営の新しいかたち

キーワード:カーボンニュートラル/サーキュラーエコノミー/SBT認証

総合商社として初めてSBTネットゼロの認定を取得し、気候変動分野で国際的な環境評価機関であるCDPから「気候変動」「フォレスト」「水セキュリティ」の3部門すべてにおいて2年連続で「トリプルAリスト企業」に選定された豊田通商。その背景には、サステナビリティは「経営そのもの」であるという明確な考えと、カーボンニュートラルを「コスト」ではなく「ビジネスチャンス」として捉える戦略があります。豊田通商の環境経営を支えるカーボンニュートラル推進部の西塚様、環境推進室の清原様、サステナビリティ推進室の黒田様の3名の方に、同社が活動推進の両輪と位置づける「実践」と「情報開示」の考え方や進捗状況について伺いました。

Person

豊田通商株式会社 カーボンニュートラル推進部 CN連携グループ

西塚 茂輝

2011年入社。食料関係の営業本部で畜産飼料業界に長く携わる。2年間のブラジル赴任中、現地で目の当たりにした経済活動と環境価値の両立の難しさに課題意識を抱き、2020年の日本政府のカーボンニュートラル宣言を機に、「ビジネスと環境の両立」の可能性を確信。社内公募制度を活用し、2025年4月より現職。対外広報、社内の機運醸成、5WG(5つのワーキンググループ)の窓口対応などを担当。

Person

豊田通商株式会社 環境推進室

清原 佑介

前職では生命保険会社の株式運用担当としてESG投資に長く携わる。商社セクターのアナリストとして豊田通商を分析する中で、同社の環境課題への取り組みや情報開示の質の高さに着目し、2024年に入社。環境関連の情報開示を主に担当し、CDP、TNFDなどの対応をリード。

Person

豊田通商株式会社 サステナビリティ推進室

黒田 永

2015年入社。IT部門で海外・国内の基幹システム導入・開発に従事した後、経営企画部門へ異動。コーポレートガバナンス、取締役会事務局、方針策定などを担当し、北京駐在も経験。人権デューデリジェンスへの関与を通じてサステナビリティ分野との接点を持ち、現在はサステナビリティ推進室でE(環境)・S(社会)・G(ガバナンス)におけるE(環境)の情報開示と社内推進を統括。

静脈への知見を原点に「Opportunity」を創出する

――最初に、豊田通商の環境経営の特徴について教えてください。

西塚:当社の環境経営は、「未来の子供たちにより良い地球を届ける」ことをミッションと位置づけ、脱炭素商社としてカーボンニュートラルにつながる取り組みや事業を力強く推進することで、産業ライフサイクルの各段階においてサーキュラーエコノミーの実現に貢献することを目指しています。そのビジョンは、「リーディングCE(サーキュラーエコノミー)プロバイダー」になること。当社の強みはサーキュラーエコノミー、つまり資源循環にあるというわけです。
 当社は、多くの商社が地球から資源を採掘して製品を生み出す「動脈」のビジネスに注力していた時代から、トヨタグループの一員として「資源を無駄なく使う」という価値観のもと、鉄スクラップの回収やリサイクルに代表される、資源の回収という「静脈」のビジネスを50年以上前から手がけてきました。ELV(使用済み自動車)はもちろん、ペットボトルや繊維などの樹脂のリサイクル、最近では電気自動車の普及を見越した車載用バッテリーの資源循環に取り組むなど、現場に根差すからこそ見える課題に対する知見を積み重ねてきた自負があります。
 私たちは、この静脈ビジネスの経験こそが豊田通商の独自性であり、今のカーボンニュートラル、サーキュラーエコノミーという時代の流れに対応する力になっていると考えています。総合商社として厚みをもたせてきたサプライチェーン・グローバルネットワークと、トヨタグループとして培ってきた価値観やビジネスが融合して、他社とは異なるアプローチができる。これが私たちの最大の特徴です。

清原:私は前職の保険会社でESG投資を担当し、商社セクターの分析を行っていました。そうした立場から豊田通商を見ていると、総合商社という肩書がありながらも、非常に尖った個性を持つ会社だという印象がありました。実際に話を聞いてみると、自動車関連分野に強みを持つからこそ、環境への意識が非常に高く、情報開示レベルも際立っていました。さらに、静脈ビジネスという独自の強みを活かして次世代を見据えた新たな価値創造事業を展開している。そんな部分に大きな可能性を感じて入社を決意しました。

――環境経営に携わる皆様の役割について教えてください。

黒田:サステナビリティ推進室は、ESG全体をカバーしながら外部の要求事項や機運を社内にフィードバックして、気候変動対応をはじめとする社内のサステナビリティの取り組みを推進しています。その中で私は特にE、環境に関する取り組み全般とSSBJといった法規制対応をメインに担当しています。

清原:環境推進室はESGの環境領域に関する全社の方針やビジョンを示し、グローバルな環境管理体制の構築や、対外的な情報発信を担っています。そのなかで私は主にCDPやTNFD(※1)に関する開示をメインに担当しています。

西塚:カーボンニュートラル推進部は、E(環境)の中でも気候変動対策領域に特化した取り組みを推進しています。具体的には、「Must Do」領域と呼んでいるスコープ1、2の削減と、「Opportunity」領域と呼んでいるスコープ3のGHG排出量算定・削減活動支援・事業推進支援、及び「Stakeholder Engagement」と呼ぶ社内外への当社のCN取り組みの周知を担当しています。
 また、環境関連の情報開示はサステナビリティ推進室と環境推進室で、ビジョンに基づく具体的なアクションに関しては環境推進室とカーボンニュートラル推進部で、それぞれのカバー範囲と深さで役割分担しつつ、兼務体制やタスクフォース組成などを通じて、実質的なワンチームとして緊密に連携しながら取り組みを進めています。
 そして、これら各々の取り組みを包括的に示したのが「カーボンニュートラルロードマップ2030」です。

※1 自然関連財務情報開示タスクフォース(Taskforce on Nature-related Financial Disclosures)。企業や金融機関が自然資本や生物多様性に関するリスクと機会を特定・評価し、財務情報として開示するための国際的なフレームワークを提供し、その普及を推進するイニシアチブ

カーボンニュートラルマップ2030を策定

――カーボンニュートラルロードマップ2030について、概要と進捗を教えてください。

西塚:カーボンニュートラルロードマップ2030では、2050年カーボンニュートラル達成に向けた中間到達点として、2030年までのカーボンニュートラル/サーキュラーエコノミー網確立を目標に掲げ、大きく3つのフェーズで取り組みを進めています。
 フェーズ1の「創成期」と呼ぶ段階では、把握と体制構築を行いました。カーボンニュートラル宣言を出したものの、まだ現状把握ができていなかったため、まずは我々の事業のどこでどれだけGHGが排出されているかの把握と、その推進体制を構築しました。このフェーズ1はすでに実行済みで、当社のカーボンニュートラル推進体制としてお示ししています。
 現在はフェーズ2に取り組んでおり、これは「エコシステムの形成」の段階と位置づけています。当社が強みとする5つの領域で営業本部を横断したワーキンググループを組成し――我々はこれを「5WG(ワーキンググループ)」と呼んでいます――それぞれの活動を有機的につなぎ、投資実行していくことで、より大きなシナジーを生み出すエコシステムを構築していこうというわけです。我々がサプライチェーン上で多様な取引先様と関わりを持つことを踏まえると、活動を無理に分けてタコツボ化する必要はなく、これらの連携・共創から大きな価値が生まれると信じています。
 さらに、フェーズ3では、各ワーキンググループの取り組みを融合させ、カーボンニュートラルやサーキュラーエコノミーが深くつながった世界の実現を目指していきます。

強みを持つ領域とつの5ワーキンググループ

(出典)豊田通商株式会社「カーボンニュートラルロードマップ2030」より

──フェーズ2の具体的な成果について教えてください。

西塚:実際に事業として芽が出てきているものがいくつもあります。例えば、当社は国内No.1の風力・太陽光の発電容量を有する子会社、ユーラスエナジーホールディングスを傘下に有しています。そこで再エネ・エネマネWGでは、このユーラスエナジーを通じて設備容量の増大にとどまらず、電力調整機能の提供やCPPA(※2)の締結などを進めています。これによって、再エネを「つくる」だけでなく、「集める・整える・届ける」といったエネルギーマネジメント領域においても太く強靭なバリューチェーンの構築を目指しています。
 また、バッテリーWGでは、韓国のLGグループに出資して車載用リチウムイオン電池材料の安定供給体制を構築しています。

※2 Corporate Power Purchase Agreementの略。企業が発電事業者と再生可能エネルギーの長期電力購入契約を結ぶ仕組み 

北海道の道北地域で国内最大規模の風力発電設備を操業

Toyota Motor North America, Inc.とともに車載用電池生産の新会社を設立。HEV、BEV用の電池を生産

 
 水素・代替燃料WGでは、名古屋で水素供給インフラを構築する事業がNEDOの補助金事業に採択されました。さらに、資源循環・3R WGグループでは、米国の大手金属リサイクル企業であるRadius Recycling Inc.を買収し、同社を通じて金属スクラップのリサイクルや使用済み自動車の再資源化といった静脈ビジネスをグローバルに加速させていきます。
 こうした事業をハブとして、多種多様なお取引先様との商流をつなぎ、環境・社会価値を高めていく。これが営業本部を横断した連携の大きな目的となります。

──一方で、カーボンニュートラルは「コスト」として捉えられがちです。この点についてはいかがですか。

西塚:「カーボンニュートラルに向けた対応はコストだ」という見方があるのは事実だと思います。実際、チャレンジングな取り組みも少なくないのも確かです。しかし、「それがすべてコストで終わってしまっていいのか?」という問いに対しては、私たちは「いいえ、決してそうではありません」と、明確な答えをもっています。

黒田:商品やサービスの脱炭素社会への貢献度を一覧にした「カタログ」もつくっていますね。

西塚:カーボンニュートラルに対するマインドセットを表現するために、表紙に「脱・儲からん、脱・炭素」という言葉を掲げました。「どうせ儲からない」と思われがちな領域だからこそ、そこから一緒に脱して“事業機会”へと変えていきましょう、というメッセージを込めています。

 また、カーボンニュートラルな世界というのは、言葉では理解していても「具体的に何をすればいいのかがわからない」と感じている人・企業がまだまだ多いのが現状ではないでしょうか。でも実は、もっと身近で、楽しくて、チャンスに溢れたポジティブになれる仕事なんだということを、当社社員はもちろん、社会の多くの人々にも知ってもらいたいという想いもありました。

清原:その想いは現状、社内ではかなり浸透していると思いますよ。私が担当する情報開示面では、西塚さんのカタログ効果もあるのでしょう、営業本部など事業サイドの方々の協力度が大きく高まっていることを実感しています。
 例えば先週、私はブラジルに出張していたのですが、現地の事業会社の社長と会話をするなかで、「環境活動の価値をいかに開示していくか」というテーマでしっかりディスカッションすることができました。
 他社では「頑張っている一部の環境担当者が勝手に取り組んでいるだけ」といった光景もよく見られると聞きます。しかし当社では、情報開示のあり方についても、地球の裏側でも同じ熱意を持って悩み、考え、取り組んでくれている仲間がいるという心強さを感じます。CNをはじめとした環境への取り組みがビジネスとしての事業機会であり、企業価値向上の源泉だと深く理解いただいているからだと考えています。

──今井社長のリーダーシップも大きいと伺っています。

清原:非常に大きいと思います。そもそも「未来の子供たちにより良い地球を届ける」というミッションを策定したのが、当時CTOだった現・今井社長です。「サステナビリティは経営そのもの」という考え方も機会があるたびに社内外で話してくれています。今井社長をはじめ経営陣の力強いメッセージを通じて、当社が注力するビジネスそのものが、未来の子供たちにより良い地球を届けることにつながっているというイメージを、社内で共有できていると感じています。

総合商社初のSBTネットゼロ認定、CDPトリプルA

──総合商社として初めてSBTネットゼロの認定を取得されました。改めてその意義について教えてください。

西塚:SBT申請においてまず強調したいのが、「当社は他の商社と比べて資源ビジネスの比重が相対的に小さい」という点です。もちろん、資源関連の事業をまったく行っていないわけではありませんが、私たちの事業ポートフォリオは、サーキュラーエコノミーやグリーンインフラ、ライフスタイルなど、サステナビリティ志向の強い領域に重点を置いていることが大きなポイントです。この点は、SBT認定における技術的なハードルを下げるという側面もありますが、それ以上に、当社の持続可能な事業戦略を象徴する重要なポイントだと考えています。
 ネットゼロについては、「スコープ12だけのカーボンニュートラルでいいのか」、という問題意識がありました。商社という業態では、スコープ12よりもスコープ3の排出量が圧倒的に大きく、その影響が非常に大きい。これをリスクではなくポテンシャルと考えて、しっかりと削減に取り組むとことで社会に貢献していきたい。誰かがやるのを待っているのではなく、私たちがやるんだ。そうした想いから、高くチャレンジングな目標ではありますが、スコープ3も含めたネットゼロを掲げました。

黒田:私も豊田通商ならではのポートフォリオの特徴が評価されたものだと思います。当社は地球を掘ることがすべてではないと考え、すでに地表にある太陽光や風をエネルギーに変えることに力を注いでいます。これを本業のど真ん中に置いてカーボンニュートラルやサステナビリティの取り組みを進めており、こうした「未来の子供たちにより良い地球を届ける」ことに本気で取り組む姿勢がSBTネットゼロ認定として現れたのだと考えています。

──もう一つの大きな成果がCDPトリプルA評価です。こちらはいかがでしょうか。

清原:これまでのカーボンニュートラル、サーキュラーエコノミー、ネイチャーポジティブ(※3)への当社の取り組みを、丁寧に開示した結果と考えています。
 各部門・各社員が環境課題に真摯に向き合ったからこそ得られた成果であることはもちろんですが、開示の拡充に向けて全社一丸で取り組めたことも大きいです。CDPは非常にボリュームのある報告書で、印刷すると500ページぐらいになります。これはコーポレート部門だけで完成させられるものではなく、営業本部をはじめ多くのメンバーに協力いただかないと作成することはできません。
 さきほどもお話ししましたが、営業本部の社員は、ビジネスの現場で一円でも多く稼ぐというプレッシャーの中で、かなりの時間を割いて作成に協力してくれました。また、トップダウン的な動きとして、社長をはじめとする経営陣の言葉を契機に、時間をかけて社内全体の意識が変わってきた。その象徴が、CDPにおける「気候変動」「フォレスト」「水セキュリティ」の3部門全てにおける「トリプルAリスト企業」の選定だと感じています。

黒田:確かに、以前の豊田通商は、不言実行を美徳とする風土があり、「黙ってやる」ことが良しとされる傾向があったと思います。それが最近になって変わりつつあり、環境経営を含めてしっかり発信すべきものは発信して、外部のステークホルダーから適切なフィードバックを頂こうという流れが加速しています。適切かつ誠実な情報開示を通して、ステークホルダーエンゲージメントをより良いものにしていきたいと考えています。

西塚:日本経済新聞社が脱炭素の取り組みで有力企業500社をランク付けした「NIKKEI GX500」(2025年版)において、総合ランキングで第2位の評価をいただきました。評価結果をカテゴリーで分解して見てみると、「温暖化ガス削減の具体策」というカテゴリーでは非常に高い評価を頂いているのですが、他のカテゴリーではまだまだ伸びしろがあると感じています。これはまだまだ不言実行の文化が一部残っていることの表れかもしれません。

黒田:まだまだ情報開示には改善の余地があるということですね。現場で汗を流しながら実現させた取り組みは、その想いを乗せてしっかり情報発信していきたいです。

※3 自然を回復軌道に乗せるため、生物多様性の損失を止め、反転させること

「実践」と「開示」を両輪に

──今のお話にあったように、豊田通商は「実践」と「開示」を環境経営の両輪と位置づけています。その考え方について教えてください。

黒田:実体がないのに開示を進めるだけなら、それはグリーンウォッシュになってしまいます。一方で、実際に活動や成果があるのに、それを開示していないと適切にステークホルダーに情報発信ができていないことになります。社長の今井は今年、中期経営計画において「次元上昇」をキーワードに挙げています。我々はこの「実践」と「開示」の両輪をしっかりと回すことこそが、ステークホルダーへの誠実な対応であり、サステナビリティ経営を次元上昇させていく上でも重要な要素だと考えています。
 外部評価については意識はしていますが、「評価を上げるために取り組む」ということは一切ありません。外部評価では、今社会で起きている問題や注目されている社会課題、環境課題が調査内容に取り上げられています。従って外部評価は社会や環境課題に対する企業の対応力を測る、いわば企業版の健康診断だと考えています。
 日頃から健康に気を使い、鍛錬もしているのであれば、健康診断にはオールAを取りたいですよね。ですから当社としては、社会や環境課題に対して適切に対応できているかどうかを常に確認し、できていない部分にはしっかりと向き合っていく。その積み重ねが事業機会にもつながり、社会にも貢献しつつ、当社のビジネス拡大していく。これが基本的な考え方です。

清原:最近では、CDPへの対応をきっかけに、いろいろな形でお問い合わせをいただくケースが増えてきています。営業現場でも、当社に対する高い評価が起点となってご相談が来ていることがあり、「見えない資産」としての価値が高まっていると感じています。今後も情報開示の一層の強化を通じてパートナー、ステークホルダーとの関係づくりにつなげていければと考えています。

黒田:我々商社は、一社だけでは何もできません。ネットゼロを実現するためにはパートナーが必要です。そうしたパートナーに対してしっかりと当社のスタンス、環境に対する思いを発信していく。その一つの手段であり、結果として現れるものが外部評価であり、パートナーとのつながりだと思います。今後も仲間づくりを進め、ビジネスパートナーと共にサステナブルな取り組みをさらに強化していきたいと思います。ぜひ私たちと一緒に、楽しみながら、心を燃やして、地球を冷やしていきましょう――情報開示を通じてそんなメッセージを伝えていきたいですね。

未来の子どもたちのために

──フェーズ3に向けた展望について教えてください。

西塚:現在のフェーズ2の段階で、サプライチェーン上でお付き合いしている取引先様とは、各営業本部でかなり踏み込んだ話をしており、経済合理性のある削減施策やエコシステムの構想はかなり見えてきた感覚があります。
 足元では、再エネ電力やリサイクル材の導入など、これまでコストを理由になかなか導入が進まなかったものに対して、具体的な問い合わせが増えており、今後は、こうした各事業者様のニーズにどこまで応えられるか、社会実装できるかが、私たちのチャレンジだと考えています。

黒田:ESG課題全般への取り組みとしては、外部の目線を積極的に取り入れるためにNPONGOとのエンゲージメントを開始しており、人権に限らず、環境においても、エンゲージメントを強化していきたいと考えています。

西塚:もう一つ、社会の巻き込みという意味で増やしていきたいのが、小・中学校での環境教育です。事業という本業も進めつつ、子どもたちに対して我々大人が悩みながらも楽しくチャレンジしている姿を見せる。こうした取り組みを続けることで、「カーボンニュートラルな世界」をあたりまえの価値観として身近に感じてもらい、未来の大人としての行動変容につながればと考えています。

──最後に、それぞれの今後の抱負をお聞かせください。

西塚:5WGを通じていろいろな営業本部やお取引先様と関わる中で、どんどん視野が広がり、構想が力強く前進していくことを実感しています。これからさらに多くの共感頂く仲間を増やしながら、より大きな力を発揮していきたいと思っています。
 加えて、個人的なモチベーションで言えば、私を含めてここにいる3人には皆、小さな子供がいます。今の自分の仕事が「未来の子供たち」の幸福度に直結している、親になってはじめてそういう実感も生まれてきました。20代の頃は目の前の仕事に全力投入でしたが、「儲けだけを考えていていいのか」、そういう意識が確実にモチベーションの一つとしてあります。

黒田:当社は脱炭素商社として、非常にユニークな会社だと思っています。カーボンニュートラルの最前線という立ち位置で、誰かがやるのを待つのではなく私たちがやってみようという風土があります。そういうところに身を置いていると、すごく刺激的ですし、自分も勉強になります。
 また、ユニークな面で注目される会社になると、外部からの関心に応えたり、期待を超えるためにもより一層頑張っていくようになると思います。ユニークな面をさらに磨き上げながらサステナビリティ経営を進化させていきたいと思います。

清原:先行するCN/CE領域が注目を浴びていますが、今後はさらにネイチャーポジティブにチャレンジしていきたいと思っています。当社はCN/CEにこのNPを加えた「CN/CE/NPの統合推進」を強く意識しています。これからルールメイキングが進んでいく領域であり、まだ答えがない、道なき道だと思っているので、やはり「誰かがやるのを待っているのではなく、私たちがやるんだ 」の精神で進みたいですし、そういうところに心強い仲間たちと一緒に向かうことができると思うとワクワクします。
 どんどん社会が変わっていく、求められることが変わっていく中で、一つひとつ真摯に対応していくことで、会社としても、個人としても成長のチャンスを見出していきたいと思います。

取材後記

 豊田通商様ではカーボンニュートラルへの取り組みを「コスト」ではなく「事業機会」と捉えて事業を推進していることや、CDPなどの外部評価も社会・環境課題への対応状況を確認する指標、いわば「健康診断」として活用されていることなど、前向きな考え方のもと、さまざまな取り組みを進められている点が非常に印象に残りました。
 これまでも、社員の皆様が一体となって「未来の子供たちにより良い地球を届ける」というミッションを軸に事業を進められていることに感銘を受けていましたが、今回の取材で、環境対応や情報開示の拡充に向けても全社で連携しながら取り組まれていることを伺い、そうした点はまさに豊田通商様の強みの一つであると改めて感じました。

(ブレーンセンター AN)

豊田通商株式会社

1948年に設立されたトヨタグループの総合商社。「未来の子供たちにより良い地球を届ける」というMissionを掲げ、唯一無二の存在"Be the Right ONE"を目指す。約130カ国におよぶグローバルネットワークと、約1,000社のグループ会社を通じて、メタル、サーキュラーエコノミー、サプライチェーン、モビリティ、グリーンインフラなど8つの事業領域で多角的なビジネスを展開。世界各国において、豊かで快適な社会づくりと地球環境に欠かすことのできない商品やサービスを提供し、持続可能な社会の実現に貢献している。

https://www.toyota-tsusho.com/

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