Perspectives

「ビジネスのちから」で環境・社会課題を解決する
“新しい視点”を。

東急不動産ホールディングス株式会社 

「広域渋谷圏」で、 サステナブルなライフスタイルを発信。パートナーとつながり、活動の輪を広げる

キーワード:街づくり/サーキュラーエコノミー

長期経営方針のなかで全社方針「環境経営」を掲げ、環境に寄与する快適な街と暮らしの創造をめざし、事業を通じてサステナブルな街づくりを追求する東急不動産ホールディングスグループ。 2023年10月に開業した「フォレストゲート代官山」では、賃貸住宅、商業施設、シェアオフィスからなるMAIN棟と、訪れる方へサステナブルな生活体験を提供しながら、事業者と連携してサーキュラーエコノミー活動を実践し、“地域と都市をつなぐ活動拠点”TENOHA棟を展開。環境負荷を低減するにとどまらず、パートナー企業や地域の人々とのつながりから、都市のなかでサステナブルなライフスタイルを提案・発信する同社の取り組みについて、プロジェクトを推進してきた小田様、伊東様に聞きました。

Person

東急不動産株式会社 
都市事業ユニット 都市事業本部 ビル運営事業部 営業運営第二グループ
グループリーダー

小田 麻友美

2007年入社。関西エリアで住宅事業の開発業務を担当後、ビル運営事業に従事し、2018年から都市型複合施設にも携わる。当時本格化していたフォレストゲート代官山の開発プロジェクトに参画し、以後、6年にわたり担当。現在はビル運営事業部営業運営のグループリーダーに就任。

Person

東急不動産株式会社
都市事業ユニット 渋谷事業本部 渋谷運営事業部 渋谷・代官山エリアグループ

伊東 栞音

2022年の入社後、フォレストゲート代官山、東急プラザ原宿「ハラカド」の営業を担当し、テナントの誘致などを担う。入社2年目からは東急プラザ原宿「ハラカド」のテナント営業・開業を主に担当、現在は再びフォレストゲート代官山に戻り運営を担当している。また、来年開業予定の代々木公園パークPFI(公募設置管理制度)にも携わり、施設運営に従事している。

多様な人が集まる渋谷にサステナビリティの発信拠点をつくる

――お二人の経歴とプロジェクトにおける役割を教えてください。

小田様:私は今、商業施設やオフィスビルといったアセットの開発・運営・営業を担う「都市事業ユニット」に所属しており、主にビルの運営に関わる業務を担当しています。

 今年で入社18年目になりますが、最初の配属先は関西エリアで用地買収や住宅物件の開発・販売企画などを担う部門でした。6年目に渋谷本社へ異動となり、ビル運営事業を担当し、12年目に、入社当初から希望していた都市型複合施設の物件に携わるようになりました。当時、この代官山のプロジェクトが本格的に始動していたので、そこから2023年度末までの6年間担当しました。

伊東様:私は新卒で入社して、今年で3年目です。この2年間ほどはずっと「広域渋谷圏」の物件を担当しています。広域渋谷圏とは、東急グループが渋谷まちづくり戦略において定めた、渋谷駅を中心とした半径2.5km圏内のことで、当社がもっとも注力しているエリアの一つです。1年目の時は、フォレストゲート代官山と東急プラザ原宿「ハラカド」のテナントリーシングを担当していました。テナントの誘致に向けて営業や契約に必要な手続きなどをする役割です。「ハラカド」が2024年4月に開業した後は、フォレストゲート代官山の担当に戻っています。

――広域渋谷圏の戦略と「フォレストゲート代官山」について教えていただけますか。

小田様:渋谷は、創業から本社をかまえる当社のホームグラウンドです。現在当社は、渋谷駅周辺で、100年に1度といわれる大規模開発を東急グループとともに進めています。

 面としてのまちづくりを推進するうえで特に意識しているのが、広域渋谷圏が渋谷、青山と代官山、恵比寿など、まったくカラーの異なる特色をもつ街の集合であること、その街のもつ文化とそこに訪れる人の多様性が魅力であることです。にぎわいのある駅周辺に対して、その後背圏には閑静な住環境や大きな公園が広がっていますし、企業やスタートアップが集積するオフィス中心の地域もあります。広域渋谷圏戦略では、それぞれの街の魅力を活かし、点在するアセットにつながりをもたせつつ、ハードとソフトの両面で関連するさまざまなパートナーと協創しながら街の価値向上をめざしています。

伊東様:その広域渋谷圏のなかでも代官山という街は、渋谷や原宿と比べて、たくさんの人が一気に集まる街ではなく、高感度の方々がフラッと訪れる街と言えます。フォレストゲート代官山は、環境への取り組みに注力したサステナブルな施設として開発されていました。これに加えて、リーシングの際には、クオリティの高い生活が根付いているようなお客さまにとって、魅力的なテナント様がそろっている状態を意識しました。

小田様:新しい「暮らす」「働く」「遊ぶ」の拠点となるよう、施設全体を森に見立てて緑化し、「環境・サステナブル」「食」をテーマに開発を進めました。着工のタイミングで新型コロナウイルス感染症が拡大し、リーシングが難しい局面を迎えましたが、「こういう時だからこそサステナビリティが一つのキーになるはず。ここはしっかりサステナビリティについて発信していく場所にしよう」と考え、開発側と営業側の連携を強めて、プロジェクトメンバー内でめざす方向性を共有しました。この独自性が他社との差別化や、事業を通したサステナブルな社会に貢献する取り組みにつながるはずだという一心です。リーシングの開始時にも、その共通イメージや方向性の理解を一致させて取り組みました。そうして営業側が最後まで方針をぶらさずにいてくれたので、素晴らしいテナント様にも出会えました。

伊東様:開発側からコンセプトをしっかり共有していただいたので、方向性が明確でした。このプロジェクト内容に共感いただいたテナント様も多かったです。なかでもブルーボトル様は当社の本気を理解してくださり、「サステナブルな施設を一緒につくりあげていこう」と、ご出店を決めていただきました。循環型社会の実現、サステナビリティの実践という部分が決め手でした。

小田様:テナント様に「サステナブルだから」と選ばれたこと、コンセプトへのご理解が得られたことは、開発側としても一貫した方針で取り組みを進めてきたことへの肯定感につながり、とても嬉しかったです。

――「TENOHA代官山」のプロジェクトは、どのような経緯で立ち上がったのでしょうか。

小田様:「TENOHA」は、フォレストゲート代官山の開発前に暫定事業としてここで生まれ、その後、当社の再生可能エネルギー事業地の地域活性化を図る施設として展開していました。そのなかで、地域の活動をもっと盛り上げるためには、その地域を超えて情報を発信し、地域同士で連携していくような仕掛けが必要だと気付いたんです。特に、都市圏がエネルギーをもらうばかりではなく、都市の持つPR力を発揮することで地方に利益を還元し、双方向のやり取りのなかでともに活性化していくような仕組みをつくること。そうして新しい価値創出につなげようと。そこで、私たちの本拠地である渋谷エリア、しかも代官山の駅前に、情報発信の拠点となる「TENOHA」をつくることになりました。

伊東様:TENOHA棟ではサーキュラーエコノミーを徹底しています。例えば、使用した木材は全て岡山県西粟倉村の間伐材です。また、1階にはカフェがあり、屋上には農園を備えています。カフェで提供するメニューで使われるハーブなどをこの農園で育て、地産地消のような「店産店消」を実践しています。
 展示や集客イベントを行えるスペースもあります。当社やテナント様に限らず、サステナブルな取り組みを発信したいさまざまな人や事業者に活用いただけるスペースです。実に多様な人が集まる立地を活かして、パートナーと協力し、新しいもの・ことをつくって発信する。そしてまた新しいパートナーと出会い、新しいもの・ことが生まれる――フォレストゲート代官山は、そんな広域渋谷圏の象徴的なプロジェクトになりました。

「サステナブル」を軸にパートナー企業や地域住民とつながっていく

――サステナビリティの発信というのがコンセプトで、特徴でもあるのですね。

伊東様:フォレストゲート代官山は、「Daikanyama High Quality Healthy Life」というコンセプトを掲げています。施設の環境負荷を低減することはもちろん、このコンセプトを丁寧に説明して、ご理解いただいた事業者にテナント様として参画いただいています。

小田様:加えて住む人、働く人、遊びに来る人をつなぐためには何が必要なのか、何が魅力的なのを考え続けるなかで、すべてのシーンで幸せをもたらすものとして、「食」というテーマにたどり着きました。

伊東様:他の事業者様と新会社を設立して取り組んでいることもありますよね。

小田様:そうですね。フォレストゲート代官山の2階部分(研究所)にはシェフたちが集いメニュー開発や製造・パッケージなどが行える食品工場の機能があり、製造した商品を1階のレストランや食物販店舗、スイーツ店舗などで販売しています。先の新会社が窓口となって、外部の方からメニューの開発や製造を受託し、実際に販売・マーケティングまでできるんです。サステナブルな商品をここに集まる生活者の皆さんに発信するという取り組みも可能ですね。

伊東様:何を決め手にフォレストゲート代官山を選んでもらうかはリーシング時にも悩んだ点ですが、こうした仕掛けを用意して、活用していただくというのも一つの方向性だと考えています。

 今ではテナント様同士が協業される例も出てきました。今朝もブルーボトル様に伺いましたが、「このパンは隣のパン屋さんでつくっているんです!」と従業員の方が紹介してくれていて。そういう声があると「そのパン屋さんにも行ってみよう」と思えます。そして、このようなつながりが生まれることこそが、私たちがめざしてきたことなんです。

小田様:地域社会への貢献としては、近くの渋谷区立猿楽小学校の生徒を招き、シブヤ未来科()の授業の一環として、TENOHAで循環型社会やサステナブルについての授業を東急不動産としてサポートする活動を今年度から始めました。

 また、今年1月には地域の子どもたちを招いて「リエネ エコール」をTENOHAで開催しました。当社の再生可能エネルギー事業部門が実施している、再エネについてクイズや工作を通して学べるイベントです。と言っても、今の子どもたちはサステナビリティ・ネイティブ。「再生可能エネルギーって知ってる?」と聞けば「知ってる」と返ってくるので驚きます(笑)。

 でも、それだけに、実際に目で見ることができ、手で触れられる活動に価値があるのだとも感じました。風力発電ひとつとっても、都心で暮らしている子は「タービンがこんなに大きいなんて知らなかった」と話していましたから、未来社会へ新たな体験や経験を伝える橋渡しができればいいなと思っています。

渋谷区が区内すべての公立小中学校で推進する探究学習

施設内の研究所は色々なシェフがメニューの開発・試作・製造を行っている

2024年1月に実施したリエネ エコールの様子

街づくりを通じてサステナビリティへの理解が広がることが願い

――まだまだ活動を広げていかれると思いますが、今後のビジョンや目標についてお聞かせください。

伊東様:不動産会社は建物開発がメインの仕事に思われがちですが、その後も何十年も運営して、その物件や周囲の街を盛り上げていかなければなりません。フォレストゲート代官山に限らず、開業時に“ハコ”に人が入ってきて、命が吹き込まれるような感覚は何度経験してもわくわくしますが、大事なのはその先。各店舗やフォレストゲート代官山全体、ひいては代官山という街のファンをいかに増やしていけるかです。地元の方々と連携しながら、さらにこの街を盛り上げていこうと思っています。

小田様:私はもともと、不動産開発というのは社会的には利になることをしていても、サステナビリティ、とりわけ環境の側面とは縁遠いような印象を持っていました。しかし今は、フォレストゲートでのアプローチによって、「エンドユーザーから遠いサステナビリティという考え方を、少し身近なものにできたし、サステナブルにも貢献できる」と胸を張って説明できるようになりました。

伊東様:当社の別施設でイベントに協力していただいているフリースタンダード様という会社があるのですが、同社はブランド品のリユース・リサイクルを支援されています。代官山のイベントでも今後、そのようなリユース・リサイクルを推進するブランドと連携していこうとしています。当社の他の施設の担当からも、「施設内で衣料品を回収して販売したいのだけれど、どうすればいいか」と相談を受けていますので、「できることは試してみる」、そういう行動の輪をこのプロジェクトをきっかけに社内に広げていきたいと思っています。

小田様:私はもう一つ大切な視点があると考えています。それは、例えば「この商品はサステナブルだよ」と言われてから手に取るより、「素敵な商品!」と手に取ってから「実はサステナブルなんだよ」と聞く方が、より「良いものだ」という印象が深まるということです。

伊東様:そうですね。その意味で、多様な人が気軽に立ち寄れる渋谷の商業施設で、サステナブルな取り組みの気配を感じてもらえればいいなと思っています。フォレストゲート代官山では、今後も多様なパートナーや地域社会と協働しさまざまな取り組みを進めていく計画ですが、そのためにはビジネスとして成り立つことが大前提です。これからも“良いもの・こと”を提案する、その延長線上でサステナビリティに貢献できるよう、取り組みをどんどん進化させていきたいと考えています。

取材後記

たくさんの緑と優しい光が差し込む空間がとても印象的だったフォレストゲート代官山。居心地が良いのはもちろんですが、座った椅子には間伐材が使用されていたり、何気なく手に取った飲み物には施設内で育った材料が使用されていたり。ふと気が付くと環境に優しい空間で生活できている――そんな、まさに「サステナブルなライフスタイル」を体感できる場となっていました。

「サステナビリティ」という言葉はよく聞きますが、身をもって体感できる場というのは、まだまだ多くはないのではないでしょうか。小田さんと伊東さんがおっしゃっていた「サステナビリティを身近なものにしたい」という想いが、代官山という地から多くの人へと伝わっていってほしいと思います。

(ブレーンセンター HS)

東急不動産ホールディングス株式会社

総合不動産大手。不動産開発から管理・運営、仲介・流通、インフラ構築や不動産投資まで、未来のまちづくりに必要な幅広い事業のノウハウ・リソースを保持している。 近年は、渋谷駅から半径2.5キロメートルの「広域渋谷圏」を中心とした優良なアセットを活用し都市間競争力の強化に貢献するとともに、地方で再エネ事業を積極的に展開するなど、GX推進と事業地における地域共生を推進。2022年には中核事業会社の東急不動産が日本の事業会社で初めて自社事業所および保有施設で使用する電力の100%再エネ切替を実現。2024年4月には、国内事業会社初となる国際的イニシアチブ「RE100」の達成が認定された。

https://www.tokyu-fudosan-hd.co.jp/

企業詳細へ

ページの先頭へ戻る
特別トークセッション公開:留学生・外国籍社員から見た日本企業の魅力と課題