Perspectives

「ビジネスのちから」で環境・社会課題を解決する
“新しい視点”を。

パナソニック エレクトリックワークス株式会社 

「顧客とつながり続ける循環経済モデル」の実現へ

キーワード:LED照明/サーキュラーエコノミー/リサイクル

パナソニックグループは、「Panasonic GREEN IMPACT」のもと、カーボンニュートラルとサーキュラーエコノミーを各事業で推進しています。グループの事業会社であるパナソニック エレクトリックワークスのライティング事業部では、蛍光ランプの規制とLED照明器具の更新期が重なるなか、照明器具を売って終わる事業から、回収後も顧客やパートナーとつながり続ける循環型事業への転換を進めています。年間約20万トンと試算される廃棄物をどう資源に変え、環境価値と経済価値を両立させるのか。二度の環境省実証を通じて構築する事業モデルと、その社会実装に向けた戦略を聞きました。

Person

パナソニック エレクトリックワークス株式会社 阿部 益巳氏の写真

パナソニック エレクトリックワークス株式会社
ライティング事業部 綜合企画室 環境企画推進課 課長
品質・環境革新センター 品質・環境マネジメント部 環境CE推進課 課長

阿部 益巳

2004年、松下電器産業(現パナソニック)に入社。白色LED光源の研究開発に携わり、LED照明の普及を技術面から支える。事業環境の変化を機に大学院で事業戦略を学び、2020年から照明事業の企画を担当。現在は、照明器具のリユース、リファービッシュ、リサイクルを組み合わせた資源循環モデルの構築と社会実装を推進している。
<出演>パナソニック エレクトリックワークス 公式YouTubeチャンネル
環境をまなぼう「教えて 阿部さん!!」

「20万トン」の廃棄物を、次の資源に変える

――パナソニックグループにとって、サーキュラーエコノミーはどのように位置づけられていますか。

パナソニックグループは、「Panasonic GREEN IMPACT」のもと、自社のCO₂排出削減と社会のCO₂排出削減への貢献に加え、循環経済の実現につながる取り組みを広げています。各事業が、それぞれの製品や顧客、バリューチェーンに応じて取り組みを具体化しており、パナソニック エレクトリックワークスのライティング事業部では、照明器具のライフサイクル全体を通じた資源循環に取り組んでいます。

Panasonic GREEN IMPACT(資料提供:パナソニック エレクトリックワークス(株))


その背景にあるのが、照明業界の大量廃棄問題です。一般照明用の蛍光ランプは2027年までに製造・輸出入が段階的に廃止されます。同時に、2010年頃から普及したLED照明器具も更新期を迎えます。照明器具の年間出荷台数は約6,500万台、平均重量は3~4キログラムですから、単純計算で年間約20万トン規模の廃棄物が発生します。家電4品目の廃棄物が約50万トン規模(家電リサイクル年次報告書:24年度再商品化実績)であることを踏まえても、無視できない量です。

しかも、事業系の照明器具は家電リサイクル法の対象ではありません。交換工事の現場では配線や天井材などと一緒に扱われ、混合廃棄物になりやすい。資源として生かすには、まず照明器具だけを分別し、回収、輸送、解体、素材再生までをつなぐ仕組みが必要です。

さらに、使用済み照明器具を再び製品に生かすことは、廃棄物の削減だけでなく、資源の確保にもつながります。地政学リスクが高まるなか、事業に必要な資源を安定的に調達することは重要な経営課題です。単に再生材を市場から購入するのではなく、工場端材や使用済み照明器具を自社製品へ戻す循環ループを形成し、環境負荷と資源調達リスクの両方を抑えようとしています。

パナソニック エレクトリックワークス株式会社 阿部 益巳氏のインタビューカット

「顧客とつながり続ける循環経済」へ

――課題解決に向けて、どのような方針で事業化を進めているのでしょうか。

ライティング事業部が掲げているのは、「顧客とつながり続けるサーキュラー〈循環〉エコノミー〈経済〉」です。照明器具を循環させるには、顧客、代理店・工事会社、物流会社、リサイクル事業者、素材メーカーなど、多くの関係者が継続して参加できる事業の仕組みが必要です。

その実現に向けた大きな課題が、販売後の製品の状態や行方を把握しにくいことです。従来の照明事業は、代理店を通じた売り切り型が中心でした。使用済み製品を回収するには、代理店だけでなく、その先の工事会社や顧客、回収・再資源化を担う事業者とも新たにつながる必要があります。

一部にはリース会社と連携した機能提供型サービスもありますが、すべての顧客がリースへ移行するわけではありません。そこで、売り切り型を維持しながら、販売提案と回収提案を組み合わせる事業モデルを構想しています。販売後も顧客やパートナーとつながり続けて、使用済み製品を資源として戻す流れをつくる考えです。

この事業モデルの実現に向けて、ライティング事業部は2023年度から環境省の実証事業に取り組んできました。2023年度の最初の実証では、照明器具の資源循環に関わる組織はまだ限られていましたが、2025年度からの二度目の実証では、実施体制が約17組織に広がっています。こうした進展を踏まえ、2026年度からは「サーキュラーエコノミーの具体化・社会実装」が事業部の重点課題に位置づけられています。

目指す姿

パナソニック エレクトリックワークス株式会社 阿部 益巳氏のインタビューカット



顧客とつながり続けるサーキュラー〈循環〉エコノミー〈経済〉詳細(資料提供:パナソニック エレクトリックワークス(株))

工場内の循環から、使用済み製品の循環へ

――資源循環の事業モデルは、どのような取り組みから形になったのでしょうか。

最初に取り組んだのは、新潟工場の端材のクローズドループリサイクルです。製造工程で発生する鉄の端材を分別して再生鋼板にし、照明器具の材料として戻しました。パナソニックグループでも初めての取り組みで、その後はポリカーボネートのリサイクルにも対象を広げました。

工場内での循環で得た成果を、次は市場で使われた照明器具へ広げたいと考えたことが、環境省の実証事業へ応募するきっかけになりました。目指したのは、使用済み照明器具のリユースやリサイクルが、環境面だけでなく事業としても成立する条件を確かめることです。

――2023年度と2025年度の二度にわたり、環境省の実証事業に採択されています。それぞれの狙いを教えてください。

2023年度の最初の実証は、サーキュラーエコノミーモデルを社会に実装するうえでの課題を明らかにするものでした。続く2025年度からの実証では、そこで見えた課題の解決策を技術として形にし、社会実装によって脱炭素効果を生み出すことを目指しています。仕組みを描いて検証する段階から、必要な技術を開発し、実際に動かす段階へ進んでいます。

最初の実証では、生活協同組合コープさっぽろの協力のもと、使用中のLED照明器具の稼働時間のモニタリングと光学特性の抜き取り検査から余寿命を診断し、蛍光灯器具を使っていた別の店舗へ移設しました。中古LEDのリユースによる電気代の変化や追加コスト、運用上の課題といった経済面の効果を検証するとともに、廃棄物の削減や新たな資源投入の抑制など、環境面での効果についても評価しました。リサイクルについては、鉄と樹脂でリユースと同様の評価を行いましたが、当時は素材メーカーが参画していなかったため、机上の試算に留まりました。

この実証の重要な成果の一つが、回収から再利用、再資源化までのライフサイクルフロー図を作成したことです。環境価値と経済価値を評価するには、モノがどこからどこへ流れ、各工程で何が行われ、どこまでを評価対象とするのかを明確にしなければなりません。そこで、みずほリサーチ&テクノロジーズ(株)(現(株)みずほ銀行)の支援を受けながら、評価範囲となるバウンダリを定め、算定の基礎となるフロー図に仕上げました。

このフロー図に基づいて環境価値と経済価値を評価した結果、リサイクルだけでは回収、輸送、解体に費用がかかり、経済価値を生み出しにくいことが分かりました。一方、まだ使えるLED照明器具をリユースして蛍光灯器具を置き換えれば、廃棄費用の削減に加え、電力コストの低減も期待できます。環境価値と経済価値を両立するには、そのまま使うリユース、整備して再利用するリファービッシュ、素材に戻すリサイクルを組み合わせる必要があります。この気づきが、二つ目の実証の出発点になりました。

回収から再利用、再資源化までのライフサイクルとCO₂排出量削減効果(資料提供:パナソニック エレクトリックワークス(株))

資源循環率80%以上の社会システムを実装する

――2025年度からの実証では、どのような仕組みを構築しているのでしょうか。

環境省の「地域共創・セクター横断型カーボンニュートラル技術開発・実証事業」において、「低炭素化に資する照明機器の資源循環ループ形成の技術開発・実証」に取り組んでいます。期間は2027年度までの3年間で、(株)竹中工務店とパナソニック ホールディングス(株)が共同実施者として参画しています。目標は、製品・部品の価値をリユースやリファービッシュで長く保ち、最後は水平リサイクルによって素材を次の製品へ戻す、資源循環率80%以上の社会システム基盤を構築することです。

リサイクルの一部はすでに運用を始めていますが、最終的には2030年にリユースやリファービッシュを含む全体の仕組みを打ち出すことを目指しています。試算では、パナソニック エレクトリックワークス単体で約13万トン(当社代表機種:一体型LEDベースライト「iDシリーズ」での試算)、照明業界全体へ波及した場合は約800万トンのCO₂削減効果を見込んでいます。

――具体的には、どのような取り組みを行っているのでしょうか。

第一は、BIMなどを活用して既存のLED照明器具を資産として位置づけ、トレーサビリティを管理し、リユースにつなげる仕組みづくりです。第二は、リファービッシュやリサイクルの効率を高める高速・高精度な自動分解ロボットの開発。第三は、鉄、非鉄、樹脂・レアメタルなどを次の照明器具の材料へ戻す水平リサイクル技術の確立。そして第四は、これらを結び、モノの流れとCO₂排出量を統合して追跡するシステムの開発・運用です。

このなかで、(株)竹中工務店はリユースに向けたデータ管理を、パナソニックホールディングス(株)は自動分解ロボットとブロックチェーンを、素材メーカーは素材開発を、東京大学はビジネスモデルの最適化シミュレーションを担います。それぞれの技術を個別に開発するだけでなく、パナソニック エレクトリックワークス(株)が中心となりながら、輸送事業者、リサイクラー、リース会社、コンサルティング会社などとともに事業モデル全体を設計し、一つの社会システムとしてまとめています。

実施体制

代表実施者 パナソニック エレクトリックワークス(株)  
共同実施者 (株)竹中工務店 リユース
  パナソニックホールディングス(株) リファービッシュ、トレースシステム
協力者 生活協同組合コープさっぽろ リファービッシュ
  東京製鐵(株) リサイクル
  YKK AP(株) リサイクル
  三菱ケミカル(株) リサイクル
  出光ファインコンポジット(株) リサイクル
  オリックス環境(株) リユース、リファービッシュ、リサイクル、事業化計画
  日本通運(株) リユース、リファービッシュ、リサイクル、事業化計画
  (株)みずほ銀行 統合実証
  SMTBリース(株) 事業化計画
  PwCコンサルティング合同会社 事業化計画
  古河電気工業(株) リサイクル
  DOWAエコシステム(株) リサイクル
  JX金属(株) リサイクル
  東京大学 大学院工学研究科 統合実証

高い市場シェアを、回収ネットワークの力に変える

――こうした仕組みを社会に広げるうえで、課題となるのはどのようなことでしょうか。

大きな課題の一つが、使用済み照明器具を安定して回収する仕組みをつくることです。パナソニックの照明市場でのシェアは約40~50%あります。そこで実証では、製品の販売に活用してきた営業ネットワークを、使用済み製品の回収にも生かせるかを全国規模で検証しています。目標は2年間で10万台です。

この試みには二つの意味があります。高い市場シェアと全国の営業・流通ネットワークを生かして回収の仕組みを構築できれば、それ自体が循環型事業の強みになります。一方、それでも十分に回収できなければ、民間の取り組みだけでは限界があり、法制度による後押しが必要だと国に示す材料になります。民間主導で進めるのか、法制化も視野に入れるのかを見極める取り組みです。

環境省からも、約20万トンという廃棄物の課題分析が評価され、パナソニックだけの事業メリットにとどめず、業界全体や法制化も見据えて取り組むことが求められています。自社のシェアを事業基盤として生かしながら、業界全体の回収の仕組みをどうつくるかが問われています。

――回収を含めて、複数の事業者が担う工程を、どのように一つの循環として管理しているのでしょうか。

製造・販売を担う動脈産業と、回収・再資源化を担う静脈産業の事業者が、バトンリレーのようにモノと情報を受け渡します。リユース、リファービッシュ、リサイクルの各工程を通じて、製品や素材がどこへ流れ、どれだけのCO₂が排出・削減されたのかを一貫して把握する必要があります。

そこで活用しているのが、パナソニックグループがDVDやBlu-ray事業で培ったセキュリティ対策技術を応用した、ブロックチェーン基盤型トレーサビリティ・プラットフォーム「Tracephere™」です。複数の事業者が情報を共有するなかで、データが改ざんされたり削除されたりすれば、環境価値や経済価値を正しく評価できません。Tracephere™によって、製品や素材の流れとCO₂データを改ざんされにくい形で管理し、循環全体の資源循環効果と脱炭素効果を可視化していきます。

ブロックチェーン基盤型トレーサビリティ・プラットフォーム「Tracephere™」(資料提供:パナソニック エレクトリックワークス(株))

環境価値を経済価値へつなげ、「照明版の中古車市場」を

――この仕組みを持続可能なビジネスにするために、何が必要でしょうか。

鍵になるのは、関係者それぞれにメリットが生まれる設計です。輸送やリサイクルを担う事業者には収益機会があり、リユースではメーカーにも収益が生まれます。一方、照明器具を使用する施主は回収や更新の費用を負担する側になりやすく、経済的なメリットが見えにくいという課題があります。

現在は、環境効果を数値化し、第三者による確認を経て、施主の環境ブランディングや情報開示に活用してもらっています。ただし、それだけでは施主への経済的な還元にはなりません。そこで、リユースやリサイクルによるCO₂削減効果をクレジット化し、資源循環に参加した施主にもお金が戻る仕組みを検討しています。照明器具のサーキュラーエコノミーによるCO₂削減効果のクレジット化について、テストマーケティングを進める計画です。

最初の実証で分かったのは、リサイクルだけでは環境価値は生まれても、経済価値を生み出しにくいということでした。だからこそ、今回の実証では、モノと情報に加えてお金も循環させる仕組みを検討しています。参加者それぞれにメリットが生まれて初めて、サーキュラーエコノミーは事業として定着すると考えています。

――欧州では資源循環への対応が進んでいます。パナソニックは、どのように差別化しようとしているのでしょうか。

再生資源の利用を政策や法令をもとに推進しているEUはサーキュラーエコノミー行動計画なども策定しており、やはり気になる存在です。そこで今年3月にドイツ・フランクフルトで開催された照明の国際見本市には、私も調査団の一員として行きました。ただ、欧州の照明メーカーが打ち出していたのは、主にポリカーボネートなどの再生材の活用と、解体しやすい設計です。欧州では手作業で製造しているところも多く、結果として解体しやすい面があるのです。一方、パナソニックは自動機による大量生産を強みとしてきました。新潟工場では3.5秒に1台のペースで照明器具を製造しています。欧州のネジ設計などをそのまま取り入れると、日本のものづくりが培ってきた生産性を生かせない可能性があります。

そこで、自動機による大量生産の強みを維持しながら、解体しやすい設計を追求し、必要に応じて自動分解ロボットも組み合わせます。欧州の方法をそのまま真似るのではなく、日本のものづくりに合った解体設計とプロセスを構築する。それがパナソニックの差別化につながると考えています。

――事業として、どのような将来像を描いていますか。

私たちがめざしているのは、売り切り型も維持しながら、サーキュラーエコノミーでも収益を得られる事業です。新品を販売して終わるのではなく、余寿命を確認した使用済み照明器具をリユースし、必要に応じてリファービッシュし、最後に素材としてリサイクルする。自動車に新車、中古車、部品交換という選択肢があるように、照明でも製品価値を段階的に生かす市場をつくろうとしています。

そのためには、余寿命診断、製品履歴の管理、回収・再設置、品質保証、価格形成などの条件を整える必要があります。製品価値を最大限に生かし、関係事業者にも収益が生まれる仕組みをつくることで、企業成長とCO₂排出量の最小化を両立させる。ライティング事業部の取り組みは、リユース、リファービッシュ、リサイクル、データ管理を一体で進めるモデルケースとして、パナソニックグループ内でも評価されています。照明業界全体へ展開できる循環経済モデルへ育てることが、次の目標です。

パナソニック エレクトリックワークス株式会社 阿部 益巳氏のインタビューカット

パナソニック エレクトリックワークス株式会社

パナソニックグループの事業会社として、グループの祖業である配線器具を受け継ぎ、照明、環境・エネルギー機器、電設建材、ソリューションエンジニアリングなど、電気設備に関わる幅広い事業を展開。住宅、オフィス、商業施設、スポーツ施設など、社会を構成する多様な空間のくらしとインフラを支えている。「いい今日と いい未来を 電気設備から」をパーパスに、電気設備とデジタル技術を組み合わせ、Well-Beingとエネルギーマネジメントの領域で新たな価値を創出。サステナビリティを経営の基盤に据え、安心・快適なくらしと持続可能な社会の実現に取り組んでいる。

https://panasonic.co.jp/ew/

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