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イベント参加レポート

株式会社エスプールの荒井直氏が法政大学の「CSR論Ⅱ」で特別講義を実施

株式会社エスプールの取締役である荒井直氏が、2024年11月11日(月)に、法政大学人間環境学部の「CSR論Ⅱ」にて特別講義を行いました。今回は講義を主催されている法政大学の長谷川直哉教授が、本メディア「Perspectives」で以前掲載した株式会社エスプールプラスの記事をご覧になったことがきっかけとなりました。エスプールは社会課題を事業で解決する「ソーシャルビジネス」を実践しており、主に雇用創出、環境経営推進、地方創生などの社会課題の解決に貢献しています。講義では、これから社会に出る学生に向けて、ソーシャルビジネスの在り方やご自身と会社が社会の変化に対応しながら成長してきた経緯などを解説されました。障がい者の雇用の問題など、身近であるにもかかわらず個人、そして企業がなかなか踏み込めない課題について、深く考えるきっかけとなりました。

主催者

法政大学人間環境学部人間環境学科教授

長谷川 直哉

安田火災海上保険株式会社(現株式会社損害保険ジャパン)にて、資産運用業務に従事。(公財)国際金融情報センターへの出向し国際経済の調査に従事する傍ら、1999年にESG投資の先駆けとなる「損保ジャパングリーンオープン“ぶなの森”」を開発しファンドマネジャーを務める。2005年「社会的責任投資における企業評価モデルの研究」で横浜国立大学にて博士(経営学)学位を取得。現在は東証プライム上場企業の社外取締役やサスティナビリティ・アドバイザーに携わりながら、法政大学人間環境学部人間環境学科の教授を務め、CSR論や現代企業論などの授業を展開している。

講演者

株式会社エスプール
取締役

荒井 直

大学卒業後、旅行代理店に就職し、3年間法人営業に従事。2002年に自身の成長やチャレンジの機会を求めて、創業3年目の株式会社エスプールに転職。社長室長などを経て、現在は子会社・社長室担当としてエスプールの経営企画、広報・IR、サステナビリティ、子会社のサポートなどを担当。グループ全体の舵取り役として、経営戦略の立案から株主・投資家との対話まで、マルチに活躍している。

エスプールが生み出した革新的な雇用支援

 講義では、まず障がい者雇用の現状について説明されました。「日本企業は障害者雇用促進法で全従業員の2.5%()の障がい者を雇用する義務があるが、この法令を順守している会社は約半分にとどまっている」「現在、労働人口に該当する障がい者489万人のうち約13%の64万人しか民間企業に就職できておらず、とくに知的障がいのある方は未だ就業機会に恵まれない」という現実を話され、この問題を解決すべく始まった「わーくはぴねす農園」での障がい者雇用支援事業について紹介されました。

 法定雇用率は2024年11月時点。2026年7月からは2.7%に改正予定。


関連記事:

「雇用する側とされる側、双方がハッピーになる障がい者雇用支援で、不平等や貧困をなくしたい」

 この事業は、エスプールが所有する「わーくはぴねす農園」を複数の企業に賃貸し、企業に雇用された障がい者が、農園で野菜作りに取り組むという新たなビジネスモデルとなっており、主に知的障がいがある方の雇用促進に貢献しています。また、障がい者の福祉サービスの多くが、国からの給付金や助成金で運営されているのに対し、エスプールのサービスでは一切公的なお金を活用していないため、持続可能な事業となっている、という説明がありました。この革新的な事業は日本初となり、障がい者雇用という大きな課題に新たな道を示したほか、障がい者にとっては企業に直接雇用され、従業員として賃金や各種制度の利用を保証されながら働くことができ、お客さまである企業、障がい者の家族などあらゆる方面へ良い影響を生むことができたといいます。

同社がソーシャルビジネスで収益を伸ばし、東証プライムに上場していること自体に持続可能性を感じられ、講義をふまえて国だけではなく民間企業が社会課題解決に関わる必要性を学びました。

他にも地方創生に資する広域行政BPOサービスや環境経営支援サービスについて解説され、様々な社会課題の解決に関わっていることや、会社として集中型経営からポートフォリオ経営に変革したメリットも語られました。

学生が気になる、会社の「軸」とこれからについて

講義に参加した学生からは「雇用支援、行政支援、環境経営支援とそれぞれ異なる分野だが、なぜこれらに着目したのか」といった質問がありました。分野としては異なりますが、どれもエスプールの創業時の想いや社会から求められていることに関連しており、どの課題も根底では繋がっている、ということを考えさせられました。荒井氏は、エスプール創業当時からの理念をもとに事業を展開している、と回答されていました。

障がい者雇用に対する意識変革の必要性や精神障がい者の雇用率の低さについても質問があり、荒井氏は障がいごとの特徴をふまえたこれからの支援内容について説明されたのち、障がい者とともに働く従業員への対応の重要性にも触れられました。意識変革については「障がい者を事業推進の戦力と認識することが大事」と話される場面もあり、「誰も取りこぼさない雇用支援」を目指していることが感じられました。

講義に参加して

 荒井さんのこれまでのキャリアやエスプールの成長への道筋を聞き、「問題と向き合ったときに自分は何ができるのか」を考えさせられました。荒井さんもエスプールも決して順調に進んできたわけではなく、社会環境の影響を大きく受けながらこれまで歩んできたことを伺い、問題の受け止め方や自身の行動が今後の成長に大きく関わると思い至りました。

さらに、講義終盤で荒井さんから「ベストではなくともベターなことからやっていく必要がある」というコメントがありました。この姿勢は、サステナビリティを含め新しい挑戦すべてに関連するのではないでしょうか。正しい道を考えることも重要ですが、まずは行動してみることを大切にしながら、不確実な社会に向きあっていきたいと思いました。

(株式会社ブレーンセンター SS)

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with Next Generation 未来へのインタビュー