
主催者
法政大学人間環境学部人間環境学科教授
長谷川 直哉
安田火災海上保険株式会社(現株式会社損害保険ジャパン)にて、資産運用業務に従事。(公財)国際金融情報センターへの出向し国際経済の調査に従事する傍ら、1999年にESG投資の先駆けとなる「損保ジャパングリーンオープン“ぶなの森”」を開発しファンドマネジャーを務める。2005年「社会的責任投資における企業評価モデルの研究」で横浜国立大学にて博士(経営学)学位を取得。現在は東証プライム上場企業の社外取締役やサスティナビリティ・アドバイザーに携わりながら、法政大学人間環境学部人間環境学科の教授を務め、CSR論や現代企業論などの授業を展開している。
講演者
東急不動産ホールディングス株式会社 グループサステナビリティ推進部
東急不動産株式会社 サステナビリティ推進部
部長
松本 恵
東急不動産入社後、2010 年よりグループ全体のサステナビリティ戦略策定、環境取り組み、ESG 評価対応など幅広い業務を推進。2013年より東急不動産ホールディングスのサステナビリティ推進も兼任。大学講師、セミナー等多数登壇。一級建築士。CASBEE建築評価員。
東急不動産ホールディングス株式会社を取り上げた記事はこちら:
「広域渋谷圏」で、 サステナブルなライフスタイルを発信。パートナーとつながり、活動の輪を広げる
創業時から意識してきた「サステナビリティ」
東急不動産は1950年代の住宅難の課題解決をきっかけに、人々の住宅や生活、オフィス・商業施設、リゾートなどの事業を展開してきました。リゾート事業ではスキー場やゴルフ場も運営しており自然との共生が必要不可欠なため、以前から環境に配慮した事業を意識してきたそうです。
そして現在、東急不動産が大切にしてきた「過ごし方・働き方・住まい方」の3つの軸がコロナ禍の影響もあり融合してきており、その融合したニーズに応える場所をサステナビリティを基点に提供している、というお話がありました。その一つとして、2024年7月25日にグランドオープンした「渋谷サクラステージ」を紹介されました。
災害にも配慮した再開発
渋谷は多くの人が行き交いますが、国道246号線を挟んだ移動がしづらい、スリバチ状の地形のため高低差があり歩きづらい、といった課題がありました。そこで災害時の動線確保や交通機能強化のためにも、「渋谷サクラステージ」では建物同士の地上部分を繋げ移動しやすくしているそうです。
「渋谷サクラステージ」は商業施設のほか、ホテルや駅直結型マンションを組み込んで「働く・遊ぶ・住む」が融合された施設となっており、商業施設もeコマースにはない「体験できる空間・サービス」の提供を意識している、というお話がありました。
渋谷から始める循環型社会
サステナビリティに関する活動・情報開示について、企業が機関投資家や評価機関から求められてきた経緯についても解説がありました。現在は様々なステークホルダーからも求められるようになり、ビジネスチャンスにもなってきているといいます。
東急不動産では脱炭素社会・生物多様性・循環型社会を大切にしており、環境保全型リゾートの運営や建物のZEH・ZEB化、他社と協業した再生可能エネルギー事業も行っているそうです。オフィスでの緑化や地域の子どもたちを巻き込んだ取り組みなど、不動産会社として地域全体の環境保全を行っていることも紹介されました。
講義後に参加学生から提出されたレポートでは、
- 街づくりにおける社会課題が多岐にわたることを学び、その広がりに驚いた
- 街づくりとは単なる場所の提供や商業施設の増設にとどまらない。数え切れないほどの利害関係者が存在し、業界の特性から”共創する”という表現が最も適していると学んだ
- サクラステージによって渋谷全体に「適切なにぎわい」が生まれていることを実感する。このような人々の動線の最適化は、単なる利便性の向上にとどまらず、まち全体のサステナブルな発展に大きく寄与していると考えた
- 東急不動産というと住宅のイメージが強かったが、再生可能エネルギーや物流福祉など、事業は多岐に渡り、時代の変化に対する適応力は創業当初から変わっていないことを強く感じた
といった意見がみられ、東急不動産の取り組みや松本さんの想いが確実に学生たちに届いていると感じられました。
講義に参加して
渋谷の再開発は長期にわたっており、一時的に不便を強いられる面もありますが、全ては人にも環境にもやさしい街にするため。東急不動産様は渋谷でサツマイモ掘りやホップ栽培&ビール醸造などのイベントも開催されており、これらを通じて、循環型社会への取り組みを軸に「人との繋がり」も増えていると感じました。
自分たちが気づかないうちに災害に強い、歩きやすい、環境にやさしい、過ごしやすい街が開発されています。日本そして海外から常に注目されている「シブヤ」が今後どう変化するのか、“街”としての発展が楽しみです。
(株式会社ブレーンセンター SS)