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主催者
法政大学人間環境学部人間環境学科教授
長谷川 直哉
安田火災海上保険株式会社(現株式会社損害保険ジャパン)にて、資産運用業務に従事。(公財)国際金融情報センターへの出向し国際経済の調査に従事する傍ら、1999年にESG投資の先駆けとなる「損保ジャパングリーンオープン“ぶなの森”」を開発しファンドマネジャーを務める。2005年「社会的責任投資における企業評価モデルの研究」で横浜国立大学にて博士(経営学)学位を取得。現在は東証プライム上場企業の社外取締役やサスティナビリティ・アドバイザーに携わりながら、法政大学人間環境学部人間環境学科の教授を務め、CSR論や現代企業論などの授業を展開している。
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講演者
三菱ロジスネクスト株式会社 物流ソリューションエンジニアリング部 物流システム生産設計課
門地 正史
1999年に入社。技術職としては珍しく販売代理店に約3年間出向し、フォークリフトの販売業務を担当。システムエンジニアリングの研修を受講した際、物流全体のシステムを提案する仕事に興味を持ち、2002年から物流エンジニアリング部門に異動。「お客様とダイレクトに対話し、お客様の課題を技術の力で解決できる」ことが仕事の魅力だと語る。
門地氏の活動を取り上げた記事はこちら:
女性の社会進出や食の外部化で増える冷凍倉庫需要
講義では、門地氏から日本の生産年齢人口が2070年までに20%減少する見通しの中、冷凍倉庫における自動化の必要性が説明されました。人口減少により食料消費総量は減少傾向にあるものの、女性の社会進出による共働き世帯の増加や食の外部化により、冷凍食品の消費量は上昇しているそうです。冷凍倉庫の入庫量は2000年比で1.2倍に増加し、特に冷凍食品やアイス菓子、農産物などに適したマイナス20〜30度のF1級冷凍倉庫が国内全体の8割を占めます。これらは1950年代に建てられ老朽化した倉庫も多く、建て替え需要の中で自動化へのニーズも高まっているそうです。
また、従来は港湾、または小売店で保管していた商品を内陸部の大規模な中継拠点で保管することが増え、小口多頻度配送が増えていることも語られました。
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無人フォークリフトで過酷な冷凍倉庫での労働環境を改善
この様な状況で、既存の物流設備を大きく変えずに、安心・安全機能の充実や無人化への期待が高まる中、同社が2022年に販売開始した「プラッターオート 冷凍・冷蔵倉庫仕様」についてお話いただきました。これはマイナス25度環境に対応したレーザー誘導式無人フォークリフトで、床面工事不要でレイアウト変更が容易という特徴を持ち、複数台運用にも適しているそうです。開発過程では、冷凍庫特有の霧の発生や床の凍結によるスリップなど予想外の課題に直面し、センサーの二重化や低温対策、速度制御などの対策を講じ、何とかクライアントの要求に応えることができた、と話されました。「半年くらいは霧対策に追われ、対応したメンバーは昼夜逆転の生活だった」と開発の苦労を語られました。
現在、24時間無人稼働する事例も増えており、9台が自動充電しながら稼働する大規模システムも導入されているそうです。次世代機では、画像認識により人が任意の位置に置いた荷物も扱える機能や、障害物自動回避機能などの開発が進められているそうです。
学生との質疑応答では、開発人員の確保や開発コストと価格のバランス、環境性の向上などについて質問が上がりました。門地さんからは、「ソフト系の人材は集まりやすいが、ハード系の電子工学や機械工学系の人材確保が困難」「今後量産化によるコストダウンを目指し幅広い顧客に販売したい」「大規模な冷凍倉庫ではピーク時に月の電気代が億単位になるため、開閉時間を減らすことで庫内温度の上昇を抑制するなど、色々な提案をしていく」と展望が語られました。
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講義に参加して
講義後、長谷川教授からも「日本は食料自給率が低いため冷凍保管は不可欠」「女性の社会進出だけでなく、介護施設などでも人手不足により冷凍食品の活用が増えている」といったお話がありました。食品ロスの削減においても、冷凍技術の活用は欠かせません。学生の皆さんも、「食」という自身に身近な場面で役立つ技術に関するお話を興味深く聞かれていました。
門地氏のお話の中でも語られていましたが、冷凍倉庫での仕事は非常に過酷で、身体に負担がかかるため人手も集まりにくいと聞きます。機械でできるところは自動化して作業者の負担を軽減できれば、働く人々の健康を守りながら、持続可能な物流システムを構築することができます。また、人口減少が進む中で、このような技術革新によって社会インフラを維持していくことは、企業の社会的責任として極めて重要な取り組みだと感じました。
(株式会社ブレーンセンター AN)