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主催者
法政大学人間環境学部人間環境学科教授
長谷川 直哉
安田火災海上保険株式会社(現株式会社損害保険ジャパン)にて、資産運用業務に従事。(公財)国際金融情報センターに出向し国際経済の調査に従事する傍ら、1999年にESG投資の先駆けとなる「損保ジャパングリーンオープン“ぶなの森”」を開発しファンドマネジャーを務める。2005年「社会的責任投資における企業評価モデルの研究」で横浜国立大学にて博士(経営学)学位を取得。現在は東証プライム上場企業の社外取締役やサステナビリティ・アドバイザーに携わりながら、法政大学人間環境学部人間環境学科の教授を務め、CSR論や現代企業論などの授業を展開している。
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講演者
マクセル株式会社 執行役員 新事業統括本部長
山田 將之
1996年入社。マクセルでのリチウムイオン電池開発に従事。2009年、自身が開発した材料がスマートフォンに採用されたのを機に、電池事業を手掛けるエナジー事業本部へ。以降10年間スマートフォン向けリチウムイオン電池の開発に従事。2019年からリチウムイオン電池に替わる新電池の開発に携わる。2026年4月、執行役員、全固体電池を含む新事業全般を統括する新事業統括本部長に就任。
山田氏の活動を取り上げた記事はこちら:
人手不足の製造現場ニーズに応える全固体電池
講義の冒頭、日本の生産年齢人口が2030年に7,000万人を割り込み、社会システムの維持が困難になる「2030年の壁」が提示されました。山田氏は、人手不足を補うために自動化(FA化)を進めても、その維持のために保全員が必要になり、「作れば作るほどメンテナンス負荷が増える」という矛盾を指摘します。特に産業機械に無数に使われているバックアップ電池(※)の交換が現場の大きな負荷となっており、高所作業による労災リスク、交換失敗によるライン停止(自動車工場では1時間で1億円規模の損失とも言われる)、現在使われている電池の安全性懸念や大量廃棄など、「電池の問題が経営課題に直結する」と語られました。
それに対するマクセルの解が、固体電解質を用いることで耐熱・長寿命を実現した全固体電池による「メンテナンスフリー化」です。
※主電源やバッテリーが切れた際、データや設定情報の消失を防いだり、一時的な電源供給を行ったりするための予備電池
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アナログコア技術を活かし、社会課題解決に資する製品開発
続いてマクセルが全固体電池を開発するに至った、技術的系譜をお話いただきました。社名「Maxell」は創業製品である乾電池のブランド名に由来します( Maximum Capacity Dry Cell=最高の性能を持った乾電池)。世界初や日本初の製品を立ち上げてきた競争力の源泉は、電池やそれに続くカセットテープ事業で培った「混合分散(まぜる)」「精密塗布(ぬる)」「高精度成形(かためる)」というアナログコア技術。現在の主力事業であるリチウムイオン電池、そして次世代を担う全固体電池もこの3つの技術の融合から生み出されたことを動画も交えて解説されました。
それと同時に、マクセルの製品開発が自社技術のアウトプットだけでなく、社会のニーズに対応する形で進められてきたというお話が印象的でした。全固体電池も「世の中から電池交換作業を無くす」という使命感のもと、「105℃の高温環境で10年もつ」という開発ターゲットに向けて材料や外装などの試行錯誤を重ねられ、寿命予測で105℃環境で10年後に50%以上の容量を達成し世界初の量産化を実現された経緯が語られました。
電池廃棄ゼロ、永久電源の実用化に向けて
現在、多少高価でもその利点から数年で投資回収でき、廃棄物などの削減効果でカーボンニュートラルにも貢献できる、と産業用ロボットのエンコーダ(センサー部品)やSUBARU、京セラの工場でFA機器のバックアップ電源として採用されているそうです。加えて発電素子が一体となったワイヤレス通信モジュールによる電池交換フリー、全固体電池の大型化、耐熱性の向上(150℃)など、さまざまな挑戦についても語られました。
講義の最後に行われた学生との質疑応答では、他社とのコラボレーション事例やリチウムイオン電池と比較した場合の全固体電池の課題、マクセルの知的財産戦略や市場からの評価について質問が挙がりました。講義後には持参された全固体電池の実物展示を見ながら交流する姿も見られ、学生の関心の高さがうかがえる時間となりました。
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講義後、展示された製品を見つめる学生たち
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講義にはプロジェクトメンバーの古川一揮氏も同席
講義に参加して
世界初の全固体電池量産化――そこに至るまでにはマクセルの技術の系譜と膨大な試行錯誤があります。その歩みを、電池の基礎的な知識から始まり、最新の全固体電池の適用例まで、最前線で開発を率いてこられた山田氏から解説いただける大変貴重な機会となりました。
一方、学生からは技術への素朴な好奇心だけでなく、知的財産戦略や市場からの評価とのギャップ、リサイクル時の環境負荷など、客観的な視点でマクセルの取り組みを問う質問も多く寄せられ、ESG投資やサステナビリティを研究する学生らしい視点の高さに感心しました。
マクセルの全固体電池は、材料などのサプライヤー含めオールジャパンで取り組んでいる、というお話もありました。すでに複数の企業で採用が進んでいますが、今後は日本だけでなくグローバルに評価が高まっていくことを期待しています。
(株式会社ブレーンセンター 中井 明世)