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イベント参加レポート

株式会社セブン&アイ・ホールディングスの藤本 直人氏が法政大学の「CSR論」講義に登壇

2021年12月に本メディア「Perspectives」で取り上げた株式会社セブン&アイ・ホールディングスの藤本直人氏が、2022年5月30日(月)に法政大学人間環境学部で行われた学部生向けの「CSR論」講義に登壇しました。今回の登壇は、この講座を主催されている法政大学の長谷川直哉教授が、Perspectivesに掲載された藤本氏の記事をご覧になり、身近な買い物を通じて世界の子供たちを支援するセブン&アイ・ホールディングスの商品開発に興味を持っていただいたことがきっかけとなりました。講義では、藤本氏が「サステナビリティに配慮した商品開発のきっかけ」「セブンプレミアムでの商品開発の工夫」などについて解説されました。最後に、サステナビリティに関心の高い受講生たちにより、企業が取り組むサステナビリティ活動について活発な質疑応答がなされました。
 

主催者

法政大学人間環境学部人間環境学科教授

長谷川 直哉

安田火災海上保険株式会社(現株式会社損害保険ジャパン)にて、資産運用業務に従事。(公財)国際金融情報センターへの出向し国際経済の調査に従事する傍ら、1999年にESG投資の先駆けとなる「損保ジャパングリーンオープン“ぶなの森”」を開発しファンドマネジャーを務める。2005年「社会的責任投資における企業評価モデルの研究」で横浜国立大学にて博士(経営学)学位を取得。現在は東証プライム上場企業の社外取締役やサスティナビリティ・アドバイザーに携わりながら、法政大学人間環境学部人間環境学科の教授を務め、CSR論や現代企業論などの授業を展開している。

講演者

株式会社セブン&アイ・ホールディングス
セブンプレミアム開発戦略部

藤本 直人

イトーヨーカ堂に入社し、寝具・タオルなどの住居関連の売り場を担当。その後、住居事業部で商品企画・開発に携わる。2016年1月よりセブン&アイ・ホールディングスに出向、イトーヨーカ堂で培ったマーチャンダイジングの経験を活かし、セブン&アイグループ共通のプライベートブランド商品「セブンプレミアム」における住居雑貨関連の商品開発に挑戦。現在は商品開発チームのマネジメントを担当している。

株式会社セブン&アイ・ホールディングス 藤本直人氏を取り上げた記事はこちら

セブン&アイが取り組む「実感を伴った」サステナビリティ

 パリ協定・SDGsへの対応やESG投資の高まりにより、いわゆる「グローバル企業」を皮切りに、単なる利益追求だけでなく、社会・環境課題を解決するサステナビリティへの取り組みにも力を入れなければならない時代を迎えています。特に、「Z世代」に属する若者たちは企業が取り組むサステナビリティ活動に関心を寄せており、採用活動にも大きく影響しています。

 講座では、コンビニエンスストア、スーパーストア、百貨店、専門店、金融サービスなど多様な業態を擁するセブン&アイ・ホールディングスが、グループ共通の環境宣言「GREEN CHALLENGE 2050」を掲げ、ステークホルダーとの連携を通じてCO2排出量削減や資源回収、食品ロス削減に取り組んだり、プライベートブランド「セブンプレミアム」でサステナビリティに配慮した商品を開発するようになった過程について、熱く語られました。

 特に印象的だったのは、エシカル商品開発のきっかけに関するお話です。海外商品開発担当時代、月1回海外の生産現場を回る中で、そこで働き生活する人々と日本国内との環境の差に衝撃を受けられたそうです。その後、商品を通じて何かできないかと考え続け、洗剤やハンドソープなどで共同企画を展開するサラヤ株式会社の代島氏や、こちらの記事でも取り上げた子供地球基金の鳥居代表の取り組みに感銘を受けて、サステナビリティに配慮した商品開発へ想いをさらに強くしたといいます。

「取り組む姿勢」だけでは評価しない、学生たちの鋭い指摘

 学生たちからは、講義後、「地球環境問題に配慮した商品を販売しても、価格志向の人も多い。エシカル商品を購入してもらうためにどういった取り組みをしているか」「国内の環境規制が厳しくなり、工場を規制が緩い海外に移す企業もあるというが、セブン&アイはどうなのか」といった本質に迫る鋭い質問が投げかけられ、単にサステナビリティへの取り組み姿勢を評価するのではなく、「本当に社会・環境課題解決に貢献しているか」という視点で藤本氏の講義を聞いていたことがうかがえました。藤本氏も、「日々の悩みの種で…」と現場の苦悩をのぞかせながら真摯に回答されており、活動を真にサステナブルな取り組みとするための誠実な姿勢が伝わりました。

 最後に長谷川教授から、「これからは、『サステナビリティ』だけでなく繰り返し生み出す『リジェネレーション』の時代になっていく。広告・宣伝においては、今後さらに商品開発の裏にあるストーリーを伝える必要が出てくるのでは」というコメントがありました。

講義に参加して

 改めて、藤本さんだけでなく、藤本さんに鋭い質問を投げかける学生たちも、単に「ステークホルダーから要請されているからサステナビリティ活動を推進しなければならない」という段階を超えて、「現実として誰かが苦しんでいる社会・環境問題を解決するために進まなくてはいけない」という思考に進んでいるのだと実感させられました。

 弊社が多く制作している統合報告書だけでなく、大衆的なメディアでもサステナビリティに関する発信が多くなった現在、「サステナビリティとか言っているけど、なんだかんだ企業価値を上げるためだけにやっているものだよね」という冷笑的な目線も増えてきているのではないのでしょうか。そのような目線を持つ人たちと本講義を受けた学部生の違いはきっと、藤本さんのように実感を伴った、心を動かされたストーリーを自分の中に持っているか否かではないかと思わされました。

 今後もPerspectivesでは、人の心を動かすような、良質なストーリーを発信できれば、と思います。

(株式会社ブレーンセンター MI

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